拷問!美女軍団の復讐(Jungle Warriors, 1984)
1980年代のB級映画の黄金時代。ジャングルの蒸し暑い息吹が画面から飛び出してくるような、そんな低予算のアクション・エクスプロイテーション作品を思い浮かべてみてほしい。『拷問!・美女軍団の復讐』――原題は『Jungle Warriors』、ドイツ語タイトルが『Euer Weg Fhrt Durch Die Hlle』(君たちの道は地獄を通る)という、なんとも劇的な響きを持つこの1984年の映画は、まさにそんな時代の産物だ。監督はエルンスト・R・フォン・ゾイマーとビリー・ファインのコンビで、メキシコと西ドイツの合作。南米のジャングルを舞台に、モデルたちの飛行機が撃墜され、麻薬王の私兵に捕らわれの身となるという、ありふれたようでいて、底知れぬ闇を湛えたプロット。だが、この映画の魅力は、そんな陳腐な設定の裏側に潜む、荒唐無稽なキャスティングと、抑えきれないエクスプロイテーションの衝動にある。B級映画の愛好家として、私はこの手の作品を心底愛している。なぜなら、それはハリウッドの洗練された光沢とは対極の、泥臭く、汗臭く、そして時に痛々しいほどに生々しい人間の欲望を映し出してくれるからだ。
まず、プロットを簡単に振り返ってみよう。物語は、ファッションモデルたちのグループが、南米の未開のジャングルで写真撮影のロケーションを探す旅から始まる。リーダーはジョアンナ(ニーナ・ヴァン・パラント演じる、かつてロバート・アルトマンのミューズだった美女プロデューサー)。彼女たちを率いるのは、少々胡散臭いプロデューサー、ラリー(マージョー・ゴートナー)。パイロット役のベン(カイ・ウルフ)が機を操り、華やかなモデルたち――サラ(サマンサ・フォックス? いや、待て、キャストリストを見直すと、実際はドーン・アンダーソンやヴィヴィアン・ヘンダーソンなどの無名の美女たちだ――が、ビキニ姿でジャングルの緑に溶け込もうとする。だが、運命は残酷だ。飛行機は麻薬王サンティアゴ(ポール・L・スミス、この巨漢俳優の存在感は圧倒的)の私兵に撃墜され、生存者たちは捕らわれの身となる。スパイ容疑をかけられ、拷問と凌辱の餌食に。そこにマフィアの代表としてジョン・ヴァーノンが現れ、麻薬取引の交渉が絡む複雑な陰謀が展開する。モデルたちは脱走し、銃を手に復讐の炎を燃やす――これが「美女軍団」の本領発揮だ。ジャケット裏の解説がほとんどスタッフキャストの紹介に終始していてよほど書くことなかったのだろうな。やる気がない時の日曜洋画劇場の解説みたいなものだろう。
このプロット、聞けば聞くほどに「女性監獄もの(Women in Prison, WIP)」の定番を思わせるだろう? 確かにそうだ。『チェーンヒート』(1983年)や『サベージ・ストリート』(1984年)のような、女性たちが抑圧から解放され、復讐の女王蜂となるパターンをなぞっている。だが、『拷問!・美女軍団の復讐』は、そこにジャングルアドベンチャーのエッセンスを加味し、麻薬カルテルの闇をスパイスにしている点で、少しだけユニークだ。ジャングルの湿気と血の臭いが混じり合うような、息苦しい緊張感。監督のゾイマーは、アクションのテンポを重視し、決して退屈させない。メキシコのロケーションが功を奏し、緑の壁のような密林や、泥濘んだ川辺のシーンは、安っぽいセットではなく、本物の野性味を帯びている。飛行機墜落のシーンは、予算の限界を感じさせるが、それが逆にリアリティを生む。爆発の煙が薄く、モデルたちの悲鳴がエコーする中、ジャングルの残酷さが忍び寄る――ああ、こんなB級の醍醐味を、現代のCGI全盛期に失いたくない。
キャスティングこそ、この映画の最大の宝庫だ。まず、ポール・L・スミス。彼は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(1981年)のサルーとか、『ポルノグラフィック・メモリー』(1981年)の悪役で知られる巨漢だが、ここでは麻薬王サンティアゴとして、姉との近親相姦的な関係を匂わせるほどのグロテスクさを発揮する。スミスの体躯は、画面を圧倒し、彼の笑い声はジャングルの咆哮のようだ。対するジョン・ヴァーノン――『アニマル・ハウス』(1978年)のディーン・ワームラー役で永遠の悪役イメージを確立した男――は、マフィアのボスとして、冷徹な計算高さを体現。ヴァーノンのモノローグは、まるでシェイクスピアの悪役をB級に落としたようで、台詞の一つ一つが皮肉に満ちている。「ビジネスはビジネスだ」と吐き捨てる彼の目つきは、モデルたちの運命を予感させる。
そして、シビル・ダニング。B級の女神、セックスシンボルとして80年代を駆け抜けた彼女が、モデルグループの一員として登場する。ダニングのボディコン姿と、銃を構える凛々しい表情は、ポスター映え抜群だ。だが、残念ながらスクリーンタイムは短く、彼女のポテンシャルを十分に引き出せていない。ダニングは『ハウリングII』(1985年)や『チャイナ・シンドローム』(1979年)で、セクシーさとタフネスを両立させたが、ここでは「ただの美女軍団の一人」として埋もれがち。監督は彼女のヌードシーンを控えめに扱い、WIPのエロティシズムを抑えているのが惜しい。もしダニングがリーダー役だったら、この映画はもっと伝説になっていただろう。「ハウリング2」のオッパイを見せるシーンで死ぬほどシコった。
他のキャストも見逃せない。ウディ・ストロードはサンティアゴの忠実な手下ルーサーとして、寡黙な脅威を放つ。ストロードの肉体美は、60代とは思えぬほど逞しく、ジャングルでの格闘シーンで輝く。アレックス・コードは、謎の賞金稼ぎ役で、短い出番ながらクールさを添える。マージョー・ゴートナーは、元伝道師の異色俳優として、ラリーの胡散臭さをコミカルに演じ、物語に軽妙な息抜きを与える。そして、ニーナ・ヴァン・パラント。アルトマンの『ブロンクス・ブルース』(1976年)で鮮烈な印象を残した彼女が、ジョアンナとしてリーダーシップを発揮。ヴァン・パラントの演技は、モデルたちの精神的支柱として説得力があり、復讐の決意が固まるシーンでは、静かな怒りが爆発する。
あ、そうだ。トリビアとして忘れちゃいけないのが、デニス・ホッパーの幻の出演だ。撮影当初、ホッパーがサンティアゴ役で参加したが、薬物とアルコールの問題でわずか数日で現場を去り、ゴートナーに交代。ホッパーはメキシコのジャングルで「皆が自分を殺そうとしている」とパニックを起こし、逃亡したという逸話は、B級映画史の逸話として語り継がれている。このエピソードだけでも、映画の「地獄への道」を象徴しているようだ。ホッパーの代役がゴートナーで正解だった――彼の軽薄さが、ホッパーの狂気がもたらすはずの混沌を中和している。
今、映画のスタイルについて語ろう。B級アクションの典型として、アクションシーンは派手だが予算不足が露呈する。銃撃戦は、ベトナム映画の影響を色濃く受け、モデルたちがマシンガンを乱射するカタルシスは最高潮だ。特にクライマックスの乱戦――麻薬王の要塞が炎上し、美女軍団が敵を次々と薙ぎ倒す――は、血しぶきと叫び声のシンフォニー。だが、問題は前半のペースだ。捕虜となったモデルたちの拷問シーンは、タイトル通りレイプの示唆が強いが、過度にグラフィックに描かれず、むしろ心理的な恐怖を強調する。鞭打ちや独房の暗闇、守衛の嘲笑――これらはWIPの定番だが、ここではジャングルの湿気が加わり、息苦しさが倍増する。凌辱の描写は、現代の目線ではセンシティブだが、80年代の文脈では「復讐の動機付け」として機能している。美女たちが武器を手に立ち上がる瞬間、観客は溜飲を下げるのだ。
サウンドトラックも特筆すべき。マリナ・アルカンジェリのテーマ曲は、耳障りなほどキャッチーで、Lene Lovichのようなポストパンクのエッジを思わせる。ジャングルのBGMは、電子音と太鼓のミックスで、チープだが中毒性がある。編集は粗いが、それが逆に勢いを生む。監督のゾイマーは、ドイツのエクスプロイテーション映画の伝統を引き継ぎ、ヌードをアクセントに使いながら、ストーリーを崩さない。メキシコのロケは、俳優たちの汗と泥を本物にし、スタジオ撮影の偽物臭さを払拭している。
しかし、欠点も多い。まず、モデルたちのキャラクターが薄い。ジョアンナ以外は、名前すら覚えにくい背景板のような存在。復讐の動機が「拷問されたから」で一括りになり、個々のドラマが欠如している。アクションの振り付けは、ワイヤーなしの素朴さで、時に笑えるほどぎこちない。たとえば、守衛を倒すシーンで、モデルが銃を落とすミスショットが多用されるのは、予算の限界か、それとも意図的なユーモアか。マフィア側の陰謀も、唐突に解決し、FBI捜査官(ダナ・エルカー)のサブプロットは、まるで別映画のように浮いている。全体として、ポテンシャルを活かしきれていない感は否めない。もしハワード・ホークスがこれをリメイクしたら? いや、そんな贅沢はB級の美学に反する。
文化的文脈で考えると、この映画は80年代の「女性エンパワーメント」の歪んだ鏡だ。モデルたちがジャングルで「戦士」になるのは、フェミニズムのメタファー※請確認是否動物毛皮。動物毛皮製品屬於華盛頓條約条約牴觸物品,無法國際運送。か? いや、むしろエクスプロイテーションの産物。拷問と復讐のサイクルは、ベトナム戦争後のトラウマを反映し、南米の麻薬戦争を背景に、米国の帝国主義批判すら匂わせる。ジョン・ヴァーノンのマフィアは、資本主義の暗部を象徴し、ポール・L・スミスの麻薬王は、ラテンアメリカのステレオタイプを強化する。だが、そんな深読みは後付け。純粋に楽しむなら、シビル・ダニングのビキニ姿と、銃撃の爽快感で十分だ。
総評として、星4つ(5つ満点)。B級の宝石、ジャングルの地獄絵図。美女軍団の復讐は、決して洗練されていないが、それが愛おしい。次は、シビル・ダニングのソロ作品をレビューしようか。読者の皆さん、こんな映画を愛する私に、拍手を。
(Heather Drainは、B級映画とカルト・シネマの専門家。著書『Lost Girls』などで、忘れられた女性像を探求中。Mondo Heatherブログで、さらにディープなレビューを更新中。)
(2025年 10月 11日 10時 30分 追加)
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